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雨は冷たく、乾いた薪を一抱え見つけるのにずいぶん時間がかかったが、彼はようやく、囲炉裏に小さな火をどうにか起こすことができた。一間きりのその小屋の床に切られた、沈んだ炉である。まだ青く湿りすぎた薪から、火は今、刺すような煙をもうもうと立ちのぼらせていた。彼は濡れそぼった袴と上の着物を、入口の土間に掛けて乾かそうとした。そこには、かつて農具や蓑を掛けていたであろう木の釘が、壁に並んでいた。
彼はぼろぼろの藁莚を一枚、おそらく前の住人が置いていったものを、囲炉裏のそばまで引き寄せ、その端で火を扇いだ。早く暖かくなってくれればと願いながら――心地よいほどでなくとも、せめてかじかんだ指を温められるほどには。火が大きくなり、彼が炉のできるだけ縁近くに腰を下ろして、薄い羽織を肩にきつく引き寄せる頃になっても、まだ吐く息は白かった。
その小屋は、近くの道で土砂降りに遭った彼が、まったくの偶然で見つけたものだった。にぎやかな農村らしき集落の外れに建っていた。彼は入口の軒下に立ち、田を見渡して、遅い刻限にもかかわらず遠くにこうこうと灯る家々を眺めた。それから、ここが一晩を過ごすに足る安全な場所かどうか、あたりを見回したのだった。
小屋はずいぶん長く打ち捨てられていたに違いない。外側は雑草に覆い尽くされていて、もしこれが夏で草木がもっと茂っていたなら、はたして気づけただろうかと彼は思った。茅葺きの屋根はとうに荒れ果て、下の板敷きの間に雨水が溜まったところでは木が腐っていたが、ありがたいことに、今彼が座っている囲炉裏のまわりの狭い一角だけは、そのどれにも侵されていなかった。彼は炎をぼんやりと物悲しげに見つめ、煙がとりとめのない形を結んでは消えるのを眺めた。
外では風が強まり、小屋のまわりで唸りをあげ、壊れた雨戸や破れた障子の紙を通して、その内へと探りを入れてきた。先ほど彼は建物の中を探し回ったが、藁莚と、濡れた着物を掛けた壁の釘のほかには、役に立つものは何も見つからなかった。あとに残っていたのは、緒の切れた腐りかけの草鞋が一対、台所の竈の土の形、そして壁ぎわに点々と散らばった、おびただしい数の鼠の糞ばかりだった。
次の大きな突風とともに、表の戸が開き、彼の座っているところから、一陣の雪が部屋に吹き込むのが見えた。はじめ彼は見間違いかと思った。風は相変わらず身を切るように冷たかったが、春もこれほど深まってから雪というのは珍しいことだった。けれど戸を閉めに立ち上がると、雪はたしかに土間の固い地面の上で溶けていた。
「ご心配なく、お侍さん。戸は開けっぱなしにしませんから」と、戸口から小さな声がした。見やると、それは六つばかりの小さな女の子のもので、そう言いながら戸を引いて閉めるところだった。閉め終えると、その子は右手で赤い着物についた雪をていねいに払い、左手では色鮮やかな手毬を持っていた。毬の中には鈴が入っていて、わずかな動きにもちりんと鳴った。
「こんな寒いなか、外に出ているものではないよ」と彼は言った。素足が、簡素な木の下駄の中で爪先を寒さに赤く染めているのを、そして着物と肌着一枚きりという薄着を、彼は見て取った。「凍えるだろう」。彼は手で、今や煙を立ちのぼらせている火のほうを示し、自分もそのそばに座りに行った。「あたたまりなさい。雨がやんだら、家まで送ってあげよう」
女の子は明るく微笑み、部屋に上がってくると、立ち止まってあたりを見回し、手の中で毬を軽く弾ませながらその場でくるりと向きを変えた。「招き入れてくださって嬉しいです、お侍さん。あなたはとてもおやさしい」とその子は言ったが、その妙にあらたまった話しぶりは、幼い年には不釣り合いに思われた。その子は彼のほうへ向き直り、なお明るい笑みを浮かべたまま、わずかに首をかしげて、もの珍しげに彼を見つめた。火明かりを映したその黒い瞳のまなざしは、彼の魂の奥までのぞき込んでいるかのようだった。
「ああ」と浪人は静かに言った。記憶が心の奥からほどけてくるとともに、悲しげな表情が顔に広がった。「お前のことを、覚えている」
女の子は彼に向かって満面の笑みを浮かべた。「よかった!」とその子は声をあげ、黒くしていた髪を、その本来の姿である目もくらむような白に戻した。もう本当の自分を隠さなくてよいのが嬉しかったのだ。その子は両手のあいだに毬を静かに止め、指をその形にしなやかに添わせた。「人間はたいてい、わたしのことなんて覚えていないか、覚えていても認めるのが怖いんです。ときには……また会うと、逃げてしまう。ときには、お侍さんが刀でわたしを斬ろうとする。こうして迎え入れてもらって、火のそばに座らせてもらえるのは、いいものですね」
彼は何も言わなかった。
女の子は続けた。「前にお会いした二度のこと、どちらも覚えていますか、お侍さん。一度目は京でした。あの頃のあなたは、本当にお若かった」
彼は自分の手を見つめた。骨ばった指を膝の上で組み合わせ、まるでこれが夢ではないと確かめるために、自分自身につかまっていなければならないかのようだった。「十六だった」と、彼はその子が実際には問いかけていない問いに答えた。
「覚えています」とその子は言い、その記憶をいとおしむように微笑んだ。「あの日のあなたは、黒い絹の羽織がとてもよく似合っていました。前髪を落として元服の名を名乗られてから、まだ間もない頃でしたね。もっとも、わたしはあなたの幼名のほうが、ずっと好きでしたけれど」。その子は言葉の終わりに、はにかんだ忍び笑いを添え、まるで幼い日の恋を思い出すように頬を染めた。「あの日、あなたはお兄さんと一緒でした。誰かに言われたことがあるかどうかわかりませんが、あなたがた二人は、とてもよく似ていらした。いえ、見た目ではありません。それはまるで似ていない。でもあの頃、お二人とも、同じ明るい魂を持っていらしたんです」
あの日の記憶が彼の胸につかえ、心を重くした。緩やかな闇が、身体を肉体の痛みのように這い広がっていく。彼は目を閉じ、ゆっくりと深く息を吸った。
「悲しまないで」と女の子は言い、眉をひそめて手毬を胸に抱きしめた。「あの日、あなたを守ってくれたお兄さんを、誇りに思うべきです。自分の命など顧みずに。あの方がわたしの手を取って旅立つのは、本当につらそうでした。あなたを置いて行きたくなかったんです」
その子はしばらく彼を見つめていた。もの思わしげに、けれどなお少し離れたところから、また手のひらのあいだで毬を静かに弾ませ、澄んだ鈴の音を部屋に響かせながら。彼は目を閉じたまま、その子に何も応えず、うつむき続けていたが、顔に感情の熱がのぼるのを感じ、固く合わせたまつげのあいだから、その記憶に涙がこぼれそうになるのをこらえていた。
そう、彼は確かにその子を見ていた――赤い着物を着た白髪の小さな死神を。それが手を差し伸べ、彼があれほど愛した兄に、共に行こうと誘ったのを。
もし大切な人をしっかりと抱きしめていれば、と祖母が彼のごく幼い頃に話してくれたことがある、その人の魂は身体から離れられず、死神もその人を連れ去ることはできないのだ、と。彼はあまりにきつく兄にしがみついていたので、やがて助けが来たとき、人々は兄の亡骸から彼の手を引き剥がさねばならなかった――その指は、力を込めすぎて白く、感覚を失っていた。それでもなお、死神は兄を連れて行ってしまった。
「二度目は」と、女の子はやがて続け、その記憶にその子の瞳は輝いた。「戦場でした。あの頃のあなたは少し年を重ねていて、魂はもう最初にお会いしたときほど明るくはありませんでした。でも、戦場に立つあなたの姿なら、わたしは永遠の生のあいだ、毎日でも眺めていられたでしょう。あの日々、あなたはわたしに、たくさんの若者の魂をくださった。あなたがあれほどの力と、あれほどの殺気で刀を振るうのを見るのは、本当に心地よいものでした。もしそんなことができるなら、あなたはきっと素晴らしい死神になったでしょうに」。その子はため息をつき、わずかな憂いを顔に浮かべた。「あなたが戦うのを遠くから何度も見てきたから、あの日、あなたの魂を連れ戻すよう遣わされたとき、わたしはとても悲しかった。覚えていますか」
もちろん彼は覚えていた。それでもなお、覚えていないかのように首を横に振り、その記憶を、それがおさまるべき心の奥の小さな箱の中へ、必死に押し戻そうとした。息が喉につかえ、彼はあえぎながら、その拍子に小さな火の煙を肺いっぱいに吸い込んでむせた。
「あの日、わたしはあなたのことが本当に悲しかった」と、女の子はなおも続けた。「あなたの腕が斬られて、わたしにあれほど多くの魂をもたらしたあの美しい刀を、もう握れなくなっているのを見るのは、とてもつらかった。それなのに、わたしが手を差し伸べて、共に来てと誘っても、あなたは取ってくれなかった」
「腕が、上がらなかったんだ」と彼は言い、声がかすれた。
女の子は目をくるりと回したが、唇にはなお笑みがたゆたっていた。「あなたたち人間ときたら」とその子は、大げさに信じられないというふうに首を振りながら言った。「自分の手を差し伸べてあげるまで、自分の短い命にどれほど執着しているか、まるで気づいていないんですから。そうなると、どんなちっぽけな言い訳でも持ち出してくる。それでいて、ふだんはさんざん、自分はいかに死の覚悟ができているか、主君のためにいかに命を投げ出すか、と言い聞かせているくせに」
その子は物珍しげに部屋を見回し、火の前で身をかがめた彼の姿を見つめた。彼はなお頑なに涙をこらえ、目を閉じたままでいて、その子は、彼がもう自分を見ようともしないことに、少し傷ついた。彼は以前に会ったときとはずいぶん違って見え、その魂さえ、長年の苦しみで濁り、くすんでいるようだった。その子は咳払いをした。「ずっと訊きたかったんです。あの美しい妖刀は、どうなったのですか」
「俺は……」彼は言葉につまった。「もう、持っていない」
女の子の眉が、悲しげに寄せられた。「なんてもったいない」とその子は言った。あたりの様子を見回し、彼の着ている汚れた着物を、入口に掛かった継ぎはぎの袴を、その前の床に置かれたほつれた草鞋を、青白い肌と痩せこけた身体を、まじまじと見た。「売らなければならなかったのですか。わたしを拒んだあの日から、あまりうまくいっていないようですね」
「奪われたんだ」と彼は言った。あのときどうにもできなかったとはいえ、恥じ入りながら。彼は感覚のない右腕を胸に抱え込み、身体を丸めた。「もう、どうでもいい」
女の子は小さな手を彼の頭にのせ、温かい指でやさしく髪を撫でた。「そうですか」。しばらくして、その子は訊いた。「今日は、わたしと一緒に行ってくれますか」
それでも彼はためらった。やがて、彼は静かな声で訊いた。「これより、ましなのか」
その子は微笑んで、手を差し伸べた。「ええ、これよりましです。さあ、もう行きましょう、お侍さん」
